2022年01月26日
【スタッフコラム】音の研究~学科の垣根を超えて
- ドラムカスタマイザー科
- 音響デザイン科
学習がある程度進んできた方に向けた授業から見る日頃の風景
投稿日:2022年1月27日
ライター:山内
こんにちは。国立音楽院 教務部の山内です。
今回は日頃の授業風景をご紹介したいと思います。
在学1年目の方にとっては
来年度はこういう事もわかるようになるのかな?という予習として
在学2年目の方にとっては
そういえば、こういう部分はまだ学んでいなかったかもしれないなという学びや研究として
3年目以降の履修継続を検討する方にとっては
この環境を使って、あんな研究・こんな研究もできるかもしれないという研究テーマ探しの機会として
そして、これから入学を考える方は…
マニアックな内容と感じるかもしれませんが、入学後にじっくり学んでいく内容ですのでご安心下さい。
この写真は、今月行われた音響デザイン科授業「レコーディング実習」のヒトコマ。
ドラムカスタマイザー科2年目の在校生が私物ドラムを持ち込み、サンプリングするという内容でした。
そう、写真に写っているのは何と全て学生さんの私物楽器なんです。
この学生さんは実は既に某ドラムメーカーに勤めながら通っていらっしゃいますが、日頃稼いだお金のほとんどを楽器購入にあてているとのこと。そのことを知ったドラム講師のオータケハヤト先生が今回の実習内容の企画をご提案下さり、実現に至りました。(日頃、この学生さんはオータケ先生のレッスンを受講していますが、よくレッスンにも私物楽器を持参しているようです)
今回のサンプリングはヴィンテージのドラムセットを基本としながら、スネアドラムやシンバルも沢山持ち込み、それぞれの音の違いを研究することを目的としています。
(※こちらが基本セットとなる「Rogers」のセット)
ヴィンテージ楽器は特に、しっかりと楽器を鳴らすために演奏者のテクニックも必要となりますので、このサンプリングの実習は学生さんの中から”楽器を慣らすことができる”ドラマーさんにも演奏のご協力を頂き、収録を進めています(まだ継続中です)。
1~2年間学習を進めていく内に、この
・楽器による音の違い
・演奏者による音の違い
・収録のためのマイク選び
などに触れてみると腑に落ちるポイントが各々見えてくると思います。
日頃、好きなアーティストの音を聴いて「何これ!格好良い…!!」と感じる感動を一つ一つひも解くことで、こうしたマニアックな内容への理解も進んでいくものです。
収録は基本となるドラムセットの中に含まれる「Rogers」のスネアからはじめ、まずは次々とスネアを変えて録音を進めていきました。
次から次へと出てくる学生さんの私物スネア。
圧巻…!
とにかく、凄い数です。
スネアが終わると、次はシンバルへ。
こちらも凄い数…!
太鼓類はまだヘッド(打面などに張る皮)を変える事でも音を変えていくことができますが、シンバルは叩き方をどう変えても限界がありますので、今回の収録は大変貴重な機会となりました。
サンプリングされた音源は、今後の音響関連授業でもどんどんご紹介させて頂く予定です。ミキシングをしてみると、より楽器の違いによる影響を直に感じる事ができるのではないかと思いますので今後の授業が楽しみです。
そして、この日は別の教室で実はギター講師の大浦佑先生によるギター機材の検証も行われていました。
様々なギターアンプの音を”プロファイリング”することができるKemper Profiling Power Headと、こちらもアンプのモデリング機能を搭載しているFractal Audio Systems – Axe-Fx(大浦先生私物!)を用いて、ギターキャビネット(ギターの音が出るスピーカー部分)を変えたりLINE出力でPAさんに音を送る事を想定したりと、様々な検証を行いました。
入学を検討されている方は、この内容が1ミリも分からなくて全く問題ありません。
というのも、今回の検証は今後の授業で紹介するかどうか、学科を問わず研究をテーマにした特別講座にするかといったことを考えるための検証だったのです。
興味のある学生さんは自由参加で音の違いを聴きに来ても大丈夫ですよ!という形で検証を行いました。
もはやどの学科なのかよくわからない内容ではありましたが「音の研究」というテーマが共通している1日でした。
国立音楽院では専攻学科の授業だけでなく、他学科の授業も基本的には自由に選択ができます。
私が担当している学科の中でも音響デザイン科は特に他学科とのコラボも盛んなため、日頃から様々な学科の学生さんが出入りしています。
学校説明会や体験講座、入門授業などではここまで踏み入ったご案内をすることはなかなかありませんが「こんな研究できないかな?」という学生さんからのリクエストや素朴な疑問などから実習や研究テーマへと発展することもあります。
「音の研究」は追求すればするほど、さらなる興味が湧いてくる奥が深いものですね。演奏視点からのアプローチ、音響視点からのアプローチ、楽器製作やテックからのアプローチなど、日頃あまり接する機会の無いような他分野からのアプローチに自然と触れることができる環境なのだなぁと、今回改めて感じたのでした。
ライター・スタッフ紹介
山内智博
国立音楽院 教務部・広報部長。2017年1月より教務部に所属。教務や営業、音響体験講座などの業務とともに入社直後からWEB広報業務にも携わり、2021年秋より教務部広報部長を務める。2021年度現在、音響関連の授業も受け持ち、PA(ライブ音響)やレコーディングのオペレートを務めることも。音響デザイン科のほか、作曲・制作関連学科やエレクトーン科を主に担当。