2019年02月24日
エレクトーン講師のためのピアノ指導法 : 楽譜や構造の違いから学ぶ
- エレクトーン科
- ピアノ演奏科
エレクトーンとピアノ。
同じ鍵盤楽器ではありますが、実は全く違う楽器です。
講師の先生方はお仕事の現場で
エレクトーン講師に「ピアノ弾いてください」
ピアノ講師に「エレクトーン聴きたいです!」
といった感じで、演奏のリクエストをいただくことがあるようです。
ピアノ講師は誰でもエレクトーンが弾けるわけではなく、
エレクトーン講師も誰もがピアノを弾けるというわけではないんです!
なぜ?同じ鍵盤楽器じゃないの??
2つの楽器はどのようなところが違うのか、
各楽器の特徴を掘り下げて、お互いの楽器に対する理解を深めよう!
それぞれの楽器の魅力を知ってほしい!
そんな気持ちから
「エレクトーン講師のためのピアノ指導法」という講座が開催されました。
ここではその内容をお伝えしていきます。
エレクトーン指導者がピアノ演奏者をレッスンすることを想定し、
2つの楽器の違いをしっかり理解し、指導に役立てていただけます。
目次
楽器の違いを知ろう
ピアノとエレクトーン、同じ鍵盤楽器でも
弾き方、音色や鍵盤タッチが全然違います。
ピアノは「演奏者によって音色が全く違うものになる楽器」
エレクトーンは「誰が弾いても同じ音色が出るように設計された音を、演奏者の工夫で活き活きとした音色へ変えてく楽器」
講座では、それぞれの構造・タッチ・ペダルの具体的な解説を加えながら
それぞれの楽器の違いを明らかにしていきました。
講座では下記のピアノとエレクトーンの違いについて学びました。
- ・「音を聴く」ことの違い
- ・「鍵盤の圧力」の違い
- ・「ペダルの機能」の違い
- ・「強弱の表現」の違い
- ・「脱力の仕方」の違い
- ・「鍵盤の押し方 – タッチのテクニック」の違い
エレクトーンの奏法で必要となる指の形と、ピアノ演奏で力を抜く際に必要となる指の形は違う!という事で
どういう場面でどんな指の形が必要になるか、
具体的なタッチの違い… イニシャルタッチ・アフタータッチ・ホリゾンタルタッチについて
丁寧に掘り下げる事で「こうしなさい!」と通り一辺倒な「型にはめるだけ」の教え方だけではなく、
場面に応じた奏法の使い分けができるような発想を伝授しました。
(※小さいお子さんには「型にはめる」教え方の方が、わかりやすく伝わる事もあるようです。教える側も、教え方の引き出しを増やせます。)
エレクトーンにおいて、ビブラートの表現やアコースティック楽器生演奏のような表現を可能にするアフタータッチやホリゾンタルタッチも、
ピアノ演奏の際には「余分な力」を入れた状態となってしまいます。
また、イニシャルタッチやアフタータッチの加減をしっかりと意識する事で
ピアノ演奏の際には「棚板」を叩く音までも意識が届くようになり、
コンクール上位を狙うだけではない「美しい演奏とはどんな演奏なのか」が
お分かり頂けます。
ピアノあるある 常識は非常識
- ・卵をつかむ手の形をしてはいけない!
- ・鍵盤をしっかり押してはいけない!
- ・子どもの手を型にはめてはいけない!
- ・大きな音を出してはいけない!
皆さん、ピアノ教室ではどのように教えたり教わっていたりするのでしょうか。
岳本先生がピアノあるあるとして、ピアノ教室でよく見かける光景の話題に触れると
「あー」「うん、うん」と、参加者の皆様からはうなずく声や笑い声が上がりました。
現役で講師をされている方も、幼少の頃ピアノ教室で習った方も、
具体的なエピソード例には身に覚えがあるのかもしれません。
中でも、長年ピアノ講師を務めておられる岳本先生が感じておられる点として挙げていたのが
まだ指の筋肉が発達していない(または柔らかくなっていない)小さなお子さんや初心者の方は
いきなり「力を抜いて」「しっかり弾いて」と言われても、すぐには身体が動かないよ
という事。
歌う際の声帯などと同じく、身体の使い方を覚えるには正しい理解と適切なトレーニングが必要不可欠です。
そこで、現在のピアノ教育現場における主流とは少し違う視点で
脱力法を岳本先生は大事にしています
身体の使い方を覚える脱力法
手の形や姿勢、その理由を知り適切なトレーニングへ繋げる
こうすることで身体の使い方を覚えていきます。
身体ができあがるまでは、弱い音・ゆっくりのテンポから徐々に強い音・速いテンポへと
徐々に徐々に慣らしていかないと、どんどん身体(指)に力を入れる癖が付いていってしまいます
コンクールでの好成績獲得を第一に考えると
「音程を外さない、ミスタッチをしない」という視点が大事になりますが
「楽器をしっかりと鳴らすこと」をしっかりと身に付ける事で、
綺麗な音で演奏したり、メーカーによる楽器の特徴の違いを踏まえた演奏力が身に付けられます。
長い目でピアノとお付き合いしていきたい時にも脱力奏法は上達を効果的に手助けしてくれます
より広い視野で様々な楽器・音楽に触れる
学科の枠を超えた授業履修が可能な国立音楽院だからこそ発信したいこと。
「エレクトーンはエレクトーン」「ピアノはピアノ」と限定せずに、各楽器の魅力と奏法を知り
より広い視野で音楽と触れ合って頂く機会になっていれば幸いです♪
20名を超える参加者の皆様からは「分かりやすかった!」というお声を沢山頂きました。
北や西、遠方からもお越し下さった方もいらっしゃいました。
ご来校、誠にありがとうございました(^^)!
◆出版情報
岳本先生はピアノ練習法についての本も出しています。
こちらもご覧ください。
ピアノが上手になりたい!ピアノ練習本のご紹介
◆ エレクトーン LIVE情報!
皆様のご参加お待ちしています!
◆指導講師紹介
今回の講座の講師は岳本恭治先生・おぎたひろゆき先生。
アシスタント講師に、奥田彩佳(Pf)先生(国立音楽院の卒業生。在学中にピアノとエレクトーンを履修)が参加しました。
岳本 恭治
武蔵野音楽大学音楽学部ピアノ科・国立音楽院ピアノ調律科卒業。
英国トリニティ大学グレード・ディプロマを最優秀で取得。
演奏活動と共に「ピアノ構造学・改良史・奏法史」のセミナーを行い好評を博している。
スロヴァキア国際フンメル協会より「国際フンメル賞」を受賞。
著書「ピアノ・脱力奏法ガイドブック・全四巻」(サーベル社「フンメル60の練習曲集」(ヤマハ)他多数。
現在日本フンメル協会会長、国際フンメル協会名誉会員、全日本ピアノ指導者協会(PTNA) 正会員。
おぎたひろゆき
ヤマハエレクトーンデモンストレーター。1992年メキシコ縦断ツアー。
1998年長野オリンピック表彰式サブプレイヤー。
月刊エレクトーンに「エレパソ」を5年にわたって連載し単行本4冊を出版。
ヤマハから曲集のアレンジ多数出版。2007年アルバム「ありがとう。」をリリース。
同年、声優の田中真弓氏ひきいる劇団”おっ、ぺれった”をプロデュース。
「この世はア〜ン・ビリ〜・バボ〜!」を制作。現在OrganFunkUnitでも活動している。